秋の音楽絵本 電子プログラム

秋の音楽絵本について

プログラムノートの続きになります。

紙のプログラムノートの方では書きませんでしたが、今回のCOCOHEの初チャレンジの種明かしです。

秋の音楽絵本を今回書き直すにあたって、これまでもCOCOHEとして行ってきた「赤ちゃんの泣き声は演出の一部」をもっと演出の一部にできるような演出をしたいと考えていました。で、御覧頂いた通りの演出に変更になったというわけです。

秋の音楽絵本のラストでクマの子は自分の人生を終えて、旅立っていきます。
詳しく描かれてはいませんが、2人が別れてから実は少し時間が経過しています。
そして、再び山の上にやってきた少女は山の上から街、世界を見下ろしています。

そこに空から降りてくる新しい命。
それを表現するのが会場にいる赤ちゃんたちの泣き声なのです。

ですが、赤ちゃんたちがタイミングよく泣いてくれるかは、当然ながらその時の状況によってです。
上手くいくかもしれないし、行かないかもしれないし。笑

でもそれも含めて一期一会の生の舞台の面白さであると思うわけです。

ですから、今日のお客様は今日のその時、その回でしか見れない特別なステージに出会えたということになるわけです。

私達も今回3日間6公演とこの秋の音楽絵本を上演しますが、毎回新鮮な気持ちで、毎回何が起きるか楽しみに公演を務めていきたいと思っています。

シークレットゲスト紹介

10月11日みなとみらい公演 シークレットゲスト

渡辺正親
兵庫県出身。都留文科大学、東京藝術大学卒業。
現在、新国立劇場合唱団契約メンバー、洗足音楽大学演奏要員、Newline 中国人留学生予備校講師。
第二回K声楽コンクール第2位、市川市文化振興財団 第32回新人演奏家コンクール声楽部門優秀賞受賞、イタリア声楽コンコルソミラノ・ロイヤルティガー両部門本選入選。Emil Rotundu international concert 3rd Prize、Euterpe Music Award 2022 Bronze Prize 受賞。
多くのオペラ公演に関わる傍らCM,アニメなどのレコーディングにも多数出演。
TIVAA修了。ニューヨークIVAI修了。

 

 

9月27日、10月4日 シークレットゲスト

今回のシークレットゲストはCOCOHEのニューフェイス。鵜野さくらちゃんです♪

実はまだ都内音大に在籍する音大生です。COCOHEに参加したいと手を上げていただく方はいらっしゃるのですが、現在ボーカルの募集は行っていないのです。なので大抵の場合はお断りになってしまうのですが、なんとなく彼女が応募してくれた時に、この子は一緒にやってみたいと感じまして、お話をさせてもらうことにしました。
とても素直でがんばりやさんのさくらお姉さんが今後COCOHEの公演でも登場してくれると思いますので、是非応援をよろしくお願いいたします。

秋の音楽絵本「地球の実り」全文

お話
空がほんの少し高く感じる季節がやってきました。
空にはうろこ雲がどこまでも続いています。
吹き抜ける風が少しひんやりと感じるある秋の日、一人の少女が赤く染りはじめた山のてっぺんまでやってきました。
山を登って疲れた少女は大きなおにぎりを2つ自分のそばに並べてニッコリ微笑みました。

お話
少女が大好きなおにぎりを食べようと準備を始めるとガサガサと
物音が草の茂みから聞こえたような気がしました。
振り返ってもそこには何もありません。
さて、おにぎりを食べよう。と、向き直るとまたガサガサと物音がします。

少女
なんだ、木か。

お話
不思議に思った少女はあたりを見渡しました。

少女
ギャーーーーーーー!!!

お話
そこにいたのはクマの子供。少女のおにぎりをしっかり握りしめていました。思わず、少女がクマを追いかけます。

少女
こんにちは。

クマ
こんにちは。

お話
二人はそう言葉を交わしました。なんだか、不思議と相手が愛おしく初めてあった気がしないと2人は感じていました。そして、二人は笑い合いました。

お話
クマの子はお腹がペコペコでした。
そこにちょうどふっくら美味しそうな少女のおにぎりを見て思わず手が伸びてしまったのです。
クマ 僕たちは冬眠するために食べ物をたっぷり食べなくてはいけないんだ。
夏の間はアリや蜂を食べて過ごしていたんだけど、秋になって大好物の虫たちも随分減ってしまってお腹が空いていたんだ

お話
小さな生き物は自分よりも強い生き物に食べられて、その生き物もまた、自分より強い生き物に食べられる。
一見残酷にも見えるルールの中で生き物たちは今ある命を懸命に輝かせていることを少女は知りました。

お話
クマの子は少女のおにぎりを盗んだ事を素直に謝りました。少女はニッコリ微笑んでクマの子にもう1つのおにぎりも手渡しました。

お話
おにぎりのお礼に僕の宝物を見せてあげるとクマの子は少女の手を引いて歩き出しました。

お話
どれくらい歩いたでしょうか。2人はブナの木が生い茂る場所にやってきました。ブナの木は風が通り抜ける度にブーン、ブーンと音を立てています。

クマ
僕の大好きな場所だよ。僕は秋になるとここの木の実を食べてくらすんだ。
でも今年は実が少なくて・・・
それでも、木の実一つにも命がやどっている。それをありがたく頂くんだ。

お話
少女は自分の体がブナの木の森に吹く風に包まれてブナの森の一部になったようは不思議な気持ちになりました。

お話
森の木々があちこちで赤や黄色に燃えるように美しく染まり始めていました。
それはクマの子たちに厳しい季節がまもなく訪れる事を意味しています。
それでもその美しさにクマの子と少女はしばらくうっとり見とれていました。

お話
秋の美しい景色はその姿は刻一刻と姿を変えていきます。
少女はその美しい瞬間を隣にいるクマの子と一緒に過ごせたことがなんだかともて幸せなことだと感じていました。

お話
どれほど歩いてきたでしょうか?
あたりはすっかり暗くなり、輝いていた太陽の代わりに月が美しくあたりを照らしていました。

クマ
昼になれば太陽が顔を出し、夜になれば月が辺りを照らす。
当たり前のように巡る時間の中で、季節も、地球も、そして命もグルグル回る。全部グルグル回ってる。それが僕たちの生きている場所だよ。

間奏 少女のセリフ
地球の実り、それは地球に生きるすべての生き物の命の輝き。
グルグルと回り続ける地球の中でわたしたちの小さな命もまた輝いています。
私たちが初めて出会った時に初めてのような気がせず、
愛おしく思えたのは私たちこの命のめぐりの中で幾度となく出会いと別れを
繰り返してきたからなのかもしれません。

お話
どんな命であってもどこかではじまり、いつか終える時がくる。
めぐる命を知り、未来でも過去でもなく、今、この瞬間、一瞬一瞬を大切にしなくてはいけないことを少女は自然から教えられました。

お話
少女は一人、山のてっぺんで静かな朝を迎えました。
そこからはどこまでも続く世界を見下ろすことができました。
その世界のあちらこちらから赤ちゃんの泣き声がきこえてきました。
今日もまた多くの輝く命がこの世界に舞い降りてきたのです。
そんな様子を見つめる少女の体を朝日が照らします。
髪の毛の一本一本までもがキラキラと黄金色に輝いていました。

おしまい

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